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株式会社敷島ファーム
栃木県那須郡那須町高久丙1796

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近年、「脱炭素」「GHG排出削減」「カーボンオフセット」という言葉が、日本でもよく聞かれるようになりました。欧米と比較するとまだまだ生産者・消費者ともに大きな影響が出ている状況ではありませんが、グローバルに展開する企業にとっては、既に憂慮すべき課題となっています。

農畜産業においても「脱炭素」への取り組みは、食の安心・安全と並び、信頼性を高めるための重要なテーマとなりつつあります。

「ゼロカーボンビーフ」プロジェクトは、持続可能な畜産の未来に向けた敷島ファームの「脱炭素」への姿勢と進む道を表したものになります。

敷島ファームは「ゼロカーボンビーフ」プロジェクトを通して、様々な取り組みにチャレンジし成果を広く発信していくことにより、GHG排出削減やカーボンオフセットなど「脱炭素」の周知と活動を推進するとともに、日本の畜産農家が進むべき未来を開拓してまいります。

■ゼロカーボンビーフの仕組みと取り組み

「ゼロカーボン」とは、排出する温室効果ガス(greenhouse gas:GHG)を、二酸化炭素(CO2/カーボン)に置き換えて「排出量」をもとめ、その「排出量」から様々な努力による「削減量」や、森林活動(植林・間伐等)などによる「炭素吸収固定量」を差し引く(カーボンオフセット)ことにより、「実質的な排出量ゼロ」にすることを意味します。ネットゼロともいわれます。

「ゼロカーボンビーフ」は「実質的な排出ゼロ」により生産された牛肉になります。

ゼロカーボンビーフプロジェクトはGHGの「把握」「削減」「吸収・固定」という3つの取組みと、当社の削減やオフセットに直接関係はしなくても、地域の脱炭素に有効な「プラスα」の取組みで構成されます。

GHG排出量の把握

GHG計測は様々な方法がありますが、ゼロカーボンビーフプロジェクトでは「GHGプロトコル」による排出量計測を採用しています。

「GHGプロトコル」は2011年に公表された排出量を算定・報告する国際的な基準で世界共通の基準になります。自らが直接的に排出する温室効果ガス(GHG)に加え、企業活動に必要な電力、燃料や原材料調達・流通・廃棄処理などで発生する間接的な排出など、サプライチェーンを包括したGHG排出量の計測をおこないます。
農林中央金庫の協力のもと、市場リサーチや国内外の動向などを調査・分析の上で、グローバル性や農畜産業で導入可能な「GHGプロトコル」による計測を採用しました。

計測や排出量管理はアスエネ社のクラウトサービス「アスゼロ」を利用しています。2022年8月から構築を開始しましたが、黒毛和牛牧場でのGHGプロトコル計測事例が無いことから、計測には半年以上を要しました。温対法の計測方法と共通部分が多いスコープ1、2は比較的容易に計測することができましたが、まったく前例が無いスコープ3の計測は時間を要しました。現在もアスエネ社とともにGHGプロトコルのルールと照合しながら、より精度よく計測できるよう進めています。

補足:当社のスコープ1はゲップや糞尿など牛から直接から発生するGHG、スコープ2は飼育に関係する電気や燃料などに伴うGHG、スコープ3は飼料調達や牛移動、食肉流通や廃棄物処理などで発生するGHG全般となります。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

ゼロカーボンビーフへの道 Ⅳ 〜温室効果ガス排出量管理クラウドサービス「アスゼロ」導入〜

GHG排出削減

「実質的な排出ゼロ=ゼロカーボン」は直接的なGHG排出量の削減から始まります。敷島ファームでは次の取り組みにより「GHG排出削減」に努めています。

◆高消化吸収性飼料の給与(実施中)

牛などの反芻動物は消化吸収の過程でメタンガスが発生しゲップとして排出されます。また、日々排出される糞尿からもメタンガスが発生します。

敷島ファームでは、日本製紙株式会社が国産パルプから製造する高消化性セルロース飼料「元気森森®」について、牧草の消化吸収率50%程度に対し99.6%という高消化吸収性(摂取効率と消化性が牛の生育に良い)や、国産飼料(品質と供給の安定性)、間接的に森を守る(管理森林木材利用)などの点から2022年1月より本格的に使用を開始しました。

「元気森森®」の特徴である高消化吸収性が糞便減少につながる効果が見込めるとして、メーカーでも実証試験を検討しており、ゲップ抑制の効果も期待されています。スコープ1のGHG削減につながるこれらの早期の立証が待望されています。

また、輸入飼料から国産飼料への転換は輸送に起因するスコープ3に関するGHG削減につながるだけではなく、国内での森林活動により生産された木材が原料の国産パルプを利用することから、森林の荒廃を防ぎ、日本の森を守る=GHGの吸収・固定にもつながります。

高消化吸収性による糞便減少・ゲップ抑制の数値化はまだ確立されていませんが、メーカーや研究機関とともに、様々な視点から有効性の立証を目指していきます。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

ゼロカーボンビーフへの道 Ⅱ 〜セルロース飼料「元気森森®」の給与開始〜


◆牛群改良による肥育期間の短縮(実施中)

肉用牛業界では長年、生産者・購買者ともに長期肥育で肉質が良くなる、短期肥育は肉質が落ちるなどの懸念から、生後30か月以上までの肥育が一般的とされてきました。

ですが黒毛和牛は着実に改良されており、飼育技術も向上していますので、早期出荷=品質低下とはいえない時代となってきました。

牧場からは様々なGHGが排出されますが、その90%以上を占めるのがゲップや糞尿など、牛から排出されるスコープ1のGHGになります。スコープ1は頭数や飼育期間に比例して増減しますので、早期出荷はGHG削減にとって有効な取り組みとなります。敷島ファームは従来の生後30か月前後での出荷から、品質・重量を落とさずに、生後24~25か月での出荷にシフトさせる早期出荷プロジェクトをスタートしました。

2023年4月時点での出荷時平均値は生後26.8か月齢まで進捗しており、30か月齢で出荷していた当初と比べ、飼育期間比10%以上の短縮=GHG削減に相当しています。懸念されていた肉質への影響も無く、出荷成績はAB3以上が99%、上物となるAB4以上に限定しても90%以上という成績となっています。

早期出荷は、スコープ1のGHG削減はもとより、飼育コスト削減、牛舎回転率向上とメリットがとても大きい取り組みとなっています。目標の24~25か月齢での安定出荷実現に向け、様々な取り組みや技術の開発・導入をおこなっていきます。

品質を落とさずに自信をもって早期出荷を進められるのは、家畜改良事業団との共同研究からスタートした「ゲノミック評価による牛群改良」が大きく関係しています。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

ゼロカーボンビーフへの道 Ⅰ 〜早期出荷によるCO2排出量削減〜

先進技術とこれからの畜産 Ⅱ 〜ゲノミック評価による牛群改良の成果について(中間報告)〜

先進技術とこれからの畜産Ⅲ ~ゲノミック評価による牛群改良とは?~

先進技術とこれからの畜産Ⅳ 〜ゲノミック評価による牛群改良の成果(中間報告②)と新たな形質〜


◆ 牧場間長距離輸送の削減~生まれた地で出荷まで育て上げる(実施中)

敷島ファームでは、生まれた地で出荷まで育て上げる「白老生まれ、白老育ち」「那須生まれ、那須育ち」により、牧場間の長距離輸送を行わない飼育をおこなっています。

従来は牧草が豊富で放牧も容易な北海道で繁殖(子牛生産)、食肉流通の中心となる首都圏に近い栃木で肥育としてきましたが、北海道から栃木へ子牛を移動させることが前提となるこの飼育方法には、移動のストレスや環境変化に起因する体重減少や体調不良、場合によっては死亡に至るという大きなリスクがありました。

これらのリスクを徹底的に抑えることを追求した結果、移動そのものを無くして「生まれた地で出荷まで育て上げる」という飼育方法にたどり着きました。
この牛飼いの原点ともいえる飼育方法により、子牛にとって過酷な長距離輸送が無くなりました。

北海道と栃木間は約950kmもの距離があります。子牛にとって過酷な長距離移動はトラックや船が利用されます。移動に伴い燃料となる軽油や重油からは化石燃料由来のGHGが発生しますが、この長距離輸送が無くなるということにより、スコープ3のGHG削減が削減されます。

現在その成果はGHGプロトコルにて計測中となります。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

敷島ファームのこだわりⅢ ~「白老生まれ、白老育ち」「那須生まれ、那須育ち」~


◆輸入飼料から国産・自給飼料への転換(実施中)

採草放牧地が多い北海道では比較的容易に国産粗飼料(牧草)を利用できますが、北海道以外は輸入飼料を利用するのが一般的となっています。敷島ファームでも那須牧場ではアメリカ・カナダ・オーストラリアからの輸入飼料を利用しています。

敷島ファームでは飼料供給の安定化や安全性の強化などの点から、かねてより国産飼料化を進めてきましたが、近年の状況を見て、国産飼料へ転換、耕畜連携、採草放牧地の整備、飼料作物の栽培など、輸入飼料依存低下の取り組みを一層強化しました。

那須牧場では、「元気森森」などの国産飼料や近隣産WCSへの転換により、以前は月8~10コンテナ入荷していた輸入粗飼料が、月2コンテナまで(2022年2月)削減しました。北海道でも全国的な価格高騰・飼料不足の影響への対策として、採草放牧地の整備・増設による自給率向上を進めています。

また、飼料化が期待される「ソルガム」や「ジャイアントミスカンサス」の栽培試験も実施しています。

敷島ファームでは、原材料調達輸送距離の削減によるスコープ3のGHG削減につながる輸入飼料から国産・自給飼料への転換を推進していきます。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

ゼロカーボンビーフへの道 Ⅲ 〜巨大ススキの実証プロジェクト開始。バイオマス燃料や飼料に〜

敷島ファームが担うSDGsⅠ ~サステナブルな農業・循環型農業・飼料自給・バイオマスエネルギーとして期待の「ソルガム」~


◆GHG排出削減型の堆肥処理システム(検討中)

牛から排出された糞尿堆肥はそのままでは非衛生的で環境問題にもつながることから、熟成後に土壌還元が定められています。※未熟堆肥は大腸菌等による汚染や耕作地での施肥後発酵による発芽阻害、未消化種の発芽等の問題につながります。

熟成は3か月以上の期間、定期的にショベルローダーなどを利用して切り返し(空気を送り込む)ながら80℃以上まで温度をあげる発酵作業になります。発酵時はCO2よりも強力な温室効果があるメタン(CO2の25倍)や一酸化二窒素(同、300倍)が発生します。もちろん重機を利用する切り返し作業からもCO2が排出されます。

敷島ファームでは、微生物による発酵処理技術により、2週間という短期間で熟成し、GHG排出もCO2換算で従来処理比75%削減(理論値)のGHG排出削減型高速堆肥処理システムの導入を検討しています。

本システムはスコープ1、2に関するGHG削減に有効なシステムとなりますが、まだ数値化されていない為、ゲップ抑制飼料などと同様に数値化に向けた検証を進めています。


◆ 糞尿堆肥によるバイオガス発電(協議中)

GHG排出削減型の高速堆肥処理システムと同時に進められているのが糞尿堆肥をメタン発酵させ、メタンガスを採取し発電に利用するバイオガス発電になります。
糞尿堆肥を排出(処理)する為には熟成堆肥化後に土壌還元が必須要件となりますが、熟成堆肥化ではメタンや一酸化二窒素などGHGが発生します。

糞尿堆肥によるバイオガス発電は、CO2の25倍もの温室効果があるメタンガスを、大気放出せず発電に利用することにより、本来はスコープ1のGHG排出につながる糞尿由来のメタンガスを再生可能エネルギーとして利用し、GHG削減につなげる取り組みとなります。

また、発酵後の残渣(メタンガスが抜けた残り)は牛舎の敷料として再利用しますので、環境にも資源の有効利用にも期待の取り組みとなっています。糞尿堆肥によるバイオガス発電計画は、北海道でのプラント設置に向けて最終的な調整に入っています。


◆自家消費型太陽光発電(検討中)

牛舎屋根に太陽光パネルを設置し、太陽光発電と牛舎の暑熱対策を同時に実現する取り組みになります。
直射日光にさらされる牛舎の屋根は高温となりますが、住宅屋根のような遮熱性はありませんので、牛舎内はかなりの暑さとなります。そのため、送風機で常に風を送り込む必要がありますが、現在検討を進めている牛舎屋根設置型の太陽光パネルでは、パネルと屋根の間にできる隙間が遮熱の役目をする工法で、発電と遮熱が同時におこなわれます。

また、発電した電気は再生可能エネルギーとして売電も可能ですが、敷島ファームでは牧場や自社施設での自家消費による購入電気の削減や、災害への備えとしての運用で進めています。購入電気の削減はスコープ2のGHG削減につながります。

牛舎屋根に設置する自家消費型太陽光発電は、飼育環境改善・経費削減・災害対策に取り組みながらGHG削減を実現が期待される取り組みになります。場所、工法、供給、接続など課題は多くありますが、関係各位と協議を行いながら設置に向けて検討を進めています。

GHG吸収固定/カーボンオフセット

わたしたち畜産農家が「実質的な排出ゼロ=ゼロカーボン」を達成するには「オフセット」が必要になります。敷島ファームではGHG吸収・固定による「カーボンオフセット」に取り組んでいます。

◆長期土壌炭素貯留植物の栽培(実施中)

2022年6月より、白老試験圃場にて巨大ススキと言われているジャイアントミスカンサス(GM)とエリアンサスの植栽試験を実施しています。

1年目となる2022年6月にGMを1ha5000本、エリアンサスを10a500本を植栽、2年目の2023年6月にも前年同様にGMを1ha5000本、エリアンサスを10a500本の植栽を実施しました。

GM・エリアンサスは、バイオマス燃料・カーボンニュートラル資材として知られており、家畜の飼料や敷料(牛舎床に敷いて家畜の保護や糞尿吸収など飼育環境に重要な資材。代表的なものはオガクズ)としての利用にも期待されています。

家畜飼料(牧草や穀物等)の輸入依存とが高い日本の畜産業は、海外情勢や相場に大きく影響されます。コロナ禍における入荷不足や急激な価格高騰は畜産農家に大きな打撃を与えました。

また、敷料にはオガ屑など木質資材が利用されてきましたが、カーボンニュートラル燃料として注目されるようになったことにより燃料としての需要が高まり、価格高騰・入荷困難な状況になってきました。

敷島ファームではこのような状況への対策として、耕作放棄地や傾斜地など条件が厳しい土地でも、20年以上にわたり繁茂する強さをもつGM・エリアンサスに着目しました。

GMはその強い植生に加え、1haあたり年50t-CO2もの炭素吸収・固定能力(北海道山田教授2021.10.27)という高いGHG削減能力にも期待ができるという点から、その実証試験を兼ねて植栽を開始しました。GHG問題については世界的に注目されるテーマとなっています。

GMのGHG削減能力は数値化されていませんが、敷島ファームでは研究機関と提携することにより、その立証も含め進めています。

室蘭工業大学とは定期的な生育観察や検討会により連携、東京農業大学・農林中央金庫とは土壌炭素貯留能力に関する共同研究により、数値化や土壌貯留による長期炭素固定能力の立証に向け取り組んでいきます。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

ゼロカーボンビーフへの道 Ⅲ 〜巨大ススキの実証プロジェクト開始。バイオマス燃料や飼料に〜

ゼロカーボンビーフへの道Ⅴ ~ジャイアントミスカンサスの炭素土壌貯留能力の解明へ~

「ジャイアントミスカンサス」
オギとススキの自然雑種。日本由来のイネ科多年生(和名オギススキ)。草丈3m程度。北海道など冷帯地域でも栽培可。バイオマス燃料・家畜飼料/敷料への活用が期待のほか、年50t-Co2/haともいわれる吸収/土壌貯留によるGHG固定効果にも注目。

「エリアンサス」
イネ科の多収多年生作物。東北南部・関東北部の低標高地が栽培北限とされている。草丈は3~4m程度まで育つ。手間がかからず収量が高いことから、バイオマス燃料・家畜飼料/敷料への活用に期待されている。


◆ 植林・荒廃山林整備(間伐等)などの森林活動(一部開始)

国内には荒廃山林や荒廃雑種地が多くあります。樹木はCO2を吸収して生育しますが、適切に整備されず荒廃した山林はCO2吸収効果が無いと判断されます。

間伐などにより管理されている森林では、樹木にしっかり日光があたり、生育が促進されます。生育に伴い樹木や土壌にCO2が吸収固定されていきます。

放置された荒廃山林では木々が密集し、日光は木々の上部のみしかあたらなくなります。樹木は生育が阻害され、地上は薄暗くジメジメとしていきます。このような森では吸収固定と樹木の呼吸、落葉等の腐葉で発生するCO2が均衡もしくは逆転します。そのため、荒廃山林はCO2を吸収する森林とは評価されなくなります。

敷島ファームではカーボンオフセットの一環として、荒廃山林や荒廃雑種地を自社にて取得や地主からの委託により、適切な管理を実施しCO2吸収を促進する取り組みを2022年より開始しました。
北海道で取得した荒廃山林について、山林の適切な整備をプロフェッショナルの方を含め、整備方針について検討を進めています。

森林活動は時間と手間のかかる取り組みになりますが、GHGを吸収固定し、地球環境を守る確実な方法となりますので、時間を惜しまずしっかりと取り組んでいきます。


◆荒廃・遊休農地へ堆肥施用による土壌の有機炭素貯留促進(実施中)

牛糞堆肥などの有機質資材を土壌に投入することにより、土壌の有機炭素貯留量が増加=GHG削減につながるとされています。土壌に堆肥を1.5t/10a施用した場合、年間140~630kgCO2/10aの炭素貯留になります。(農水省資料等)

敷島ファームでは直営の農園や採草放牧地、耕畜連携の田畑、ジャイアントミスカンサスなどの試験圃場や植林荒廃山林整備など、幅広く自社堆肥を施用しています。

従来は土づくりを目的として施用してきましたが、牛糞堆肥の施用がGHG吸収固定に効果があるとのことから、土壌有機炭素促進を目的とした施用も開始しました。

地目が農地となっていても利用しやすい場所ばかりではありません。農業機器を入れられない、栽培・収穫が困難など使いにくい土地は、農地であっても利用されずに荒廃していきます。

ですが農地は簡単に売買や農地以外での利用はできません。農地を守るための仕組みが荒廃・遊休農地拡大の一因と言われています。

敷島ファームでは荒廃・遊休農地を取得もしくは所有者の理解のもと、牛糞堆肥を施用し、草地化もしくはジャイアントミスカンサスなどを永年栽培することにより、土壌有機炭素促進による土壌炭素貯留向上プロジェクトを進めています。

もちろん本事業は農地以外でも適用可能です。白老町では砂利を採取した掘削穴を堆肥で埋戻すことにより、土壌炭素貯留を促進させる取り組みも実施しています。

「ゼロカーボンビーフ+α」の取り組み

GHG削減やカーボンオフセットには直接関わりませんが、「脱炭素」に有効な取り組みをおこなっています。これらを「ゼロカーボンビーフ+α」の取り組みとして紹介します。

◆堆肥のペレット化で広域流通促進と地域の土壌炭素貯留向上(実施中)

2023年5月より、北海道白老牧場からペレット牛糞堆肥の出荷が開始されます。牛糞堆肥のような有機質資材には炭素を土壌内に貯留させる効果があります。また、牛糞堆肥には、化学肥料などによる作物への強い施用効果がある肥料と異なり、弱った地力を優しく回復させる効果があります。

牛糞堆肥を田畑に施用するためには、堆肥専用散布機(マニアスプレッダ等)が必要となります。また、牛糞堆肥は土と同じような状態なので保管には場所をとり、長距離輸送は割高になります。そのため、今までは牧場の近隣で、尚且つ専用農機具を所有している比較的規模が大きい田畑への提供が中心となっていました。

堆肥をペレット化(造粒機で圧縮して粒状に固めたもの)することにより、一般的な農家で利用している農機具や小型機器での施用が可能になります。圧縮されることにより嵩(かさ)や水分が減りますので、置き場所が少なくてすみ、トラック輸送でも効率的に運ぶことができるようになります。軽トラなどでも容易に輸送が可能ですので、小規模な農家や山間部でも気軽に利用が可能になります。

今までは田畑までの距離や規模、所有機材により提供制限がありましたが、ペレット化によりそれらの制限が大幅にクリアされますので、提供可能エリアが拡大します。敷島ファームの良質な牛糞堆肥による土壌改良促進と土壌炭素貯留向上が期待される取り組みとなっています。

なお、牛糞堆肥による土壌炭素貯留向上の成果は、敷島ファームの直接的な削減やオフセットとしては反映できませんが、地域全体の「脱炭素」化には有効な取り組みになると考えています。


◆カーボンニュートラル資材~ソルガムの栽培・利活用・流通

栃木県那須町と北海道白老町にある試験圃場において、自社産牛糞堆肥を利用した「ソルガム」の栽培試験を実施しています。

敷島ファームでは主に自社堆肥施肥土壌での栽培と飼料・敷料化について検証を進めていますが、バイオマス燃料などのカーボンニュートラル資材としての有用性についても並行して検証を進めています。

地球温暖化は石油などの化石燃料を燃焼することにより、太古より地中で固定化されていたGHGが大気中に排出されることにより悪化します。そのため、化石燃料に頼らないエネルギーへの転換や森林活動などによる炭素固定が進められています。

ソルガムなどのカーボンニュートラル資材も燃焼や発酵の際にGHGが発生しますが、大気中の炭素を固定しながら成長したのちに固定していた炭素を放出=プラマイゼロという解釈よりカーボンニュートラル資材とされています。

ソルガムはソルゴー、モロコシ、タカキビ、コーリャンなど様々な呼ばれ方で栽培されるアフリカ原産のイネ科一年草になります。グレインソルガム(穀実食用・家畜飼料)、ソルゴー(多糖含有)、ブルームコーン(箒原料)、グラスソルガム(茎葉家畜飼料)に大別されます。

草丈2~5m程度まで育ち限られた土地で収量をあげるソルガムは、効率的な作物として古くから利用されています。栄養価、収穫量、糖分など用途にあわせた多くの品種がありますので、大手エネルギー企業も次世代エネルギーとして注目しており、今後は更に品種改良や利活用が進んでいくと考えています。

こちらの取り組みは下記に掲載しています。

敷島ファームが担うSDGsⅠ ~サステナブルな農業・循環型農業・飼料自給・バイオマスエネルギーとして期待の「ソルガム」~