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株式会社敷島ファーム
栃木県那須郡那須町高久丙1796

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先進技術とこれからの畜産 Ⅱ 〜ゲノミック評価による牛群改良の成果について(中間報告)〜

ゲノミック評価

交配による牛群改良は、特定の血統から生産された牛の肥育成績を蓄積したデータ(後代検定による育種価)から、その血統の能力傾向を導き出し、その情報をもとに交配し改良していく方法で、敷島ファームでもこの方法により牛群改良をおこなってきた。

しかし、この方法は情報の蓄積までに時間がかかる点や、兄弟など血統が同一時の個体差を考慮できないなどの問題があった。

そのような中、黒毛和牛においてDNA情報を利用した「ゲノミック評価」が確立されつつあるとの情報を得た敷島ファームでは、2017年より一般社団法人家畜改良事業団(LIAJ)との共同研究を通して、「ゲノミック評価」という新たな技術を利用した牛群改良に着手した。

DNA情報は個体ごとに微妙な違いがある。その箇所を膨大に蓄積されたDNA情報と比較分析し、遺伝的な能力を特定する。その能力値をもとに改良・改善させたい形質を“個々の牛ごと”に検証し交配を決定する。これを「ゲノミック評価」を利用した改良という。

人が兄弟で個性があるように牛にも個性がある。従来の評価方法ではその区別ができなかったが、「ゲノミック評価」では個体ごとの個性を評価することにより、的確な交配選択によるスピーディな牛群改良が可能となった。

初めに飼養中の繁殖母牛全頭(約4500頭)のDNA解析を実施した。これにより現状の能力把握と「ゲノミック評価」を利用した改良の方針を決めることとした。評価は枝肉6形質を5段階で表し、それぞれを全国平均と比較する。H・A・Bが平均以上、C・D平均以下となるが、ほぼすべての形質において全国平均以下の割合が高いことが判明した。(資料a)

そこで、能力が低い繁殖母牛や遺伝的リスクのある繁殖母牛を優先的に更新、次世代母牛の選抜も全て「ゲノミック評価」を利用した改良を進めた。これにより保有する繁殖母牛の能力が今までにない速度で改良され、優秀な子牛が安定して生まれるようなった。(資料b)

2021年に出生した子牛のGEBV(Genomic Estimated Breeding Value:ゲノミック推定育種価)による枝肉6形質及び一価不飽和脂肪酸(MUFA)・オレイン酸の評価値がすべて標準偏差0以上となった。これは敷島ファームの牛群が着実に改善されてきた成果と、出生子牛の能力値が、全形質において全国平均水準以上であることを示している。(資料c)

牛群改良は繁殖母牛の劣る形質(マイナス値)を補う種雄牛を交配し、世代交代により改良していく。

出生子牛の能力評価値がすべてにおいて0以上という成果は、今後の改良にとって極めて大きな成果となっている。

牛肉の評価はサシ(BMS)や色合いなどの「見た目の美しさ」が重視され、改良も枝肉6形質について進められたきた。近年ではMUFAやオレイン酸などの「脂肪の質」の改良についても関心が高まっている。低い温度で融解するMUFA・オレイン酸が多く含まれるほど、口当たりがより、甘みがあると言われる。

MUFA・オレイン酸などの脂肪酸は遺伝率が高い傾向にあることから、「ゲノミック評価」を利用した遺伝的な改良が可能な形質となっている。これらの形質は高い精度で改良が可能となっており、その精度の高さは敷島ファームの成果にもあらわれている。

これらの「ゲノミック評価」を利用した急速な牛群改良はLIAJにより詳細に分析され、共同研究の成果として論文やセミナー、専門誌を通して関係機関や畜産農家へ向け発信されている。

敷島ファームでは現在までに約12000検体に及ぶゲノム解析をおこなっており、現在も継続している。その解析情報はすべてLIAJへ提供され、様々な評価形質の精度向上や新たな形質の解明に活用されている。敷島ファームにおける「ゲノミック評価」による牛群改良の成功事例は、日本の畜産業界全体にとっても価値ある成果となっている。

なお、「ゲノミック評価」による改良は交配による改良であり、遺伝子組み換えのように遺伝子を直接操作した改良ではない。

★成果については、日経ESGでも紹介されています。

https://project.nikkeibp.co.jp/ESG/atcl/column/00007/041400057/